(文:山田敏弘)
2019年4月9日に総選挙が行われたイスラエル。結果は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる「リクード」がかろうじて与党として連立政権を維持することになった。今回、台風の目となった元軍参謀総長のベニー・ガンツが率いる有力政党連合「青白連合」は大躍進したが、結局はネタニヤフを引きずり下ろすまでには至らなかった。
選挙前、ドナルド・トランプ米大統領は、支持基盤であるキリスト教福音派を意識して、イスラエル寄りの政策をいくつも強行し、ネタニヤフの後押しになるような動きを見せていた。
2018年5月には、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移し、今年3月には、イスラエルが1967年にシリアから奪って占領してきたゴラン高原について、イスラエルの主権を正式に認める文書に署名した。選挙直前には、イスラエルの天敵であるイランの「イスラーム革命防衛隊」を、米政府としてテロ組織に指定すると発表もしている。
こうした動きが、汚職事件や背信行為のスキャンダルで追い詰められていたネタニヤフに、有利に働いたとも言えそうだ。とにかく、世界はもうしばらく、5期目に突入する彼の顔を見続けることになる。
サイバー政策の歴史に重要な役割
そんなネタニヤフだが、実はサイバーセキュリティ政策に力を入れた首相として知られている。もっと言えば、イスラエルのサイバー政策の歴史に重要な役割を果たした人である。それゆえ、今後も引き続き、サイバー空間における世界的な動向と、敵国に囲まれたイスラエルの立ち位置から、ネタニヤフの下でサイバーセキュリティが国家の安全の重要な要素と位置付けられていくだろう。
イスラエルがサイバーセキュリティにおいて、世界でも有数のサイバー部隊と能力を持っていることは、フォーサイトでも以前解説(サイバー大国「イスラエル」から日本は何を学べるか 2017年11月27日)している。
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