国際シンポジウム『揺さぶられる司法科学』では、「揺さぶられっこ症候群仮説の信ぴょう性を問う」と題して、弁護士や医師らがパネルディスカッションを行った(2018年2月)

 拙著『私は虐待していないー検証 揺さぶられっ子症候群』の中に詳細にまとめていますが、諸外国では既に「SBSに科学的な根拠はない」という意見が主流となり、刑事訴追しない方向に進んでいます。日本でも弁護士や法学者が中心となって「SBS検証プロジェクト」が立ち上がり、刑事弁護に力が注がれ、昨年から今年にかけて、揺さぶられっこ症候群に関する事件に対して、無罪判決が立て続けに下されているのです。

わが子と離れ離れにされた責任は誰が?

 冒頭のNHKニュースの中で、厚生労働省は、「病院で長期間過ごすことは子どもの発育を考えると不適切であり、受け皿を拡大させるとともに入院の初期から次の受け入れ先を探すなど対策を徹底したい」とコメントしていました。また、医療現場からも、「子どもの発達の遅れや診療体制への影響を懸念する声」が上がっているそうです。

 実際には転倒事故だったにもかかわらず、「揺さぶられっ子症候群」と診断され、1年以上もの親子分離を強いられた経験を持つ男性は、憤りを込めながらこう語ります。

「子どもへの虐待は許されません、子どもの命を守るためにオーバートリアージにならざるを得ないのも理解できます。しかし、科学的根拠が疑問視されているSBS理論を妄信して一方的に揺さぶり虐待を疑い、その結果、親と長期間引き離される子どもの辛さを考えてみてください。それこそ子どもへの虐待といえるのではないでしょうか。間違いだった、では済まされません、親と引き離されたかけがえのない時間、心の傷は、いったいだれが責任を取ってくれるのでしょうか・・・」

 事故か、病気か、虐待か・・・。特に、「揺さぶられっ子症候群」と疑われた子どもがいる場合は、病院や警察関係者の方には、ぜひ慎重に調査していただきたいと思います。