たしかに乱闘騒ぎによる暴力も、ゴミの不法投棄も軽視すべきものではない。それらは対処すべき問題だろう。では、西川口駅周辺の盛り場における治安の悪化は、いまに始まったことなのだろうか。

外国人居住者への偏見を植えつける番組作り

 西川口駅周辺は、かつて風俗の街として知られていた。違法な「本番風俗」も行っていたと噂されるその風俗街が、警察による摘発などによって壊滅状態となった。それら違法風俗店に代わって登場したのが、中国人が経営する中華料理店だった。

 そうした経緯は番組でも紹介されていたが、特集を貫くのは「中国人によって町の治安が悪化した」という論調である。では、街の各所に呼び込みの人間が立ち、違法風俗店であふれ、本番風俗の聖地であるとささやかれていた、かつての西川口の街のほうがよかったとでも言うのだろうか。

 番組が伝えたのは、西川口の街を暴力とゴミで塗り替える中国人、というイメージ以外のなにものでもない。ましてや芝園団地の映像を、意味もなく挟み込む必要があったのだろうか。

 じつは、同番組の取材班は2度にわたって芝園団地を訪ね、ゴミ問題に関して自治会関係者などに話を聞いている。その際、自治会関係者は「外国人が捨てたというよりも、外部から捨てに来る人がいる」という説明をしたのだという。

 取材班は、これではネタとして使えないと判断したのだろう。その部分はすべて編集によってカットされ、団地の外観だけが意味もなく使われたのだった。せっかく芝園団地まで足を運びながら、取材班は同団地が必死で取り組んでいる「つなぎ合い」にはまるで関心を示さなかった。中国人はあくまでも日本の風景を汚す存在でなければならなかったのだ。

学生ボランティアが担う「かけはし」とは?

 芝園団地における住民同士の交流を促進し、高齢化に伴う問題解決や多文化共生に取り組むことを目的としたボランティア組織「芝園かけはしプロジェクト」は、学生たちを中心に2015年2月に結成された。