山の事故で亡くなる人と、生きて帰る人──。一体何が生死を分けたのか? 様々な危機が潜む世界に生きる私たちにとって、山の世界で培われた「危機管理のテクニック」は大いに役に立つ。ビジネスにも応用可能な、山から生還する「7つの習慣」をプロクライマー小西浩文氏が解説する。(JBpress)
(※)本稿は『生き残った人の7つの習慣』(小西浩文著、山と渓谷社)の一部を抜粋・再編集したものです。
変化する「危機管理」という言葉の意味
「危機管理」という言葉をいろいろな場面でよく耳にするようになった。そもそも「危機管理」とは、あさま山荘事件で陣頭指揮を執った後、初代内閣安全保障室長などを歴任された佐々淳行氏が、英語の「risk management」を直訳したところからきた言葉だ。
しかし、昨今は「危機管理」の意味するところが変化してきている。ビジネスはもちろんのこと、現代人が生き抜くためのスキルともいうべき、広義の「サバイバル術」の様相を呈しているのだ。もし、そんな「危機管理」のテクニックをあなたが真剣に身につけようと思ったとしたら、「山」はうってつけの世界であろう。
なぜなら、登山ほど「危機管理」の能力が求められる世界はないからだ。毎年多くの人が遭難事故に遭っていることからも分かるように、山にはありとあらゆる「危機」が溢れている。道に迷ってしまうこともあれば、滑落することもある。雪山の場合など、吹雪に見舞われることもあれば、雪崩に押しつぶされてしまう可能性だってある。