消費税率8%と10%との差は、わずか2%であるが、しかし、心理的なインパクトは非常に大きい。第一に、二桁になる。第二に、価格の1割というのは計算が簡単な分だけ、消費の段階で重税感が増すのだ。たとえば、1万3750円の買い物をすれば、消費税は1375円になるとすぐ暗算できる。これが、8%の場合だと、電卓でも使わなければ1100円という税額はすぐに出てこない。従来の8%と比較すれば、1割という消費税率が消費を抑制する効果は、2%の税率との差以上になると考えたほうがよい。
先の世論調査を見れば、景気回復を実感していない人が大半なのだから、消費税増税時にお金の使い方を見直す人々は増えるだろう。つまり10月以降、消費の落ち込みは激しくなることが予想される。個人消費はGDPの6割を占めているため、政府はポイント還元、軽減税率など様々な対策を準備しているのだが、効果は未知数である。
消費増税延期なら衆参同日選挙か
安倍首相は今のところ「増税延期」には否定的だが、そこにはリーマン・ショックのような大きな外因性の問題でも生じていないのに延期すれば、「アベノミクスが失敗した」と内外に宣言することになってしまうという心理も働いているのかも知れない。だが、増税ショックによる日本経済の失速を回避するためには、当然ながら「延期」も必要な検討事項になる。
日本では亥年の今年は12年に一度の「選挙イヤー」で、この春の統一地方選挙の後は、参議院選挙が控えている。それだけに、消費税増税延期を決めるにしても日程的に窮屈ではあるし、増税対策を組み込んだ新年度予算もすでに確定してしまっている。
もちろん予定通りに増税を実施できればそれが一番よいのだが、景気減速リスクがさらに高まった場合は、決断が必要になるかもしれない。であれば、「増税延期」を掲げて衆参同日選挙で国民に信を問うという選択肢が現実味を帯びてくるのである。