若者を中心に「テレビ離れ」が進んでいる。では、若者はどんなメディアに夢中になっているのか。答えは、SNSの動画だ。そこで今回はテレビの世界を知り尽くす田原総一朗氏が、日本の動画界のトップランナーであるONE MEDIA 代表の明石ガクト氏に、なぜ動画がテレビを凌駕し始めたのかについて直撃してもらった。(構成:阿部 崇、撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>)
田原総一朗氏(以下、田原) 僕はYouTubeをはじめとするネット動画の世界ってよく知らないので、今日はいろいろ教えてください。まず明石さんは、なぜ動画の世界に入ろうと思ったんですか。
明石ガクト氏(以下、明石) 僕は学生時代、映像を作ってみんなに見せる活動をずっとしていたんです。例えばビルの屋上で真っ裸の男たちがトマトを投げ合うとか、渋谷のスクランブル交差点でパンダとウサギとイヌの着ぐるみを着た人が戦うとか、そういう映像を作ったんですね。で、それをDVDに焼いて人に配ったりしてた。当時、アマチュアが映像を配るには、そういうダイレクトな方法しかなかったんです。
そうしたら2005年、僕が就職活動を始める頃にYouTubeが出てきて、自分でインターネット上にアップロードすれば、地球上のどこにいてもその映像が見られるっていう世界がいきなり現れたんスね。
田原 明石さんもYouTubeに夢中になった。
明石 はい。「これ、面白いじゃん」ってことで僕らもやり始めたんです。
テレビ業界に就職しなかった理由
田原 それなのに、テレビ局や制作プロダクションとかに就職しようとは思わなかったの?
明石 当時、テレビって最も斜陽産業って言われていたんです。実際、どんどん収益も落ちてるし、「あんまり未来がないよね」って思われてました。で、僕はYouTubeにビデオをアップしていたので、そこでインターネット業界に目が向いたんですね。まずはそっちの世界に一回行ってみようって。
田原 インターネット業界ってどういう会社に入ったの?
明石 「エキサイト」っていうポータルサイトの会社です。当時、Yahoo!とかエキサイトといったポータルサイトがものすごく注目されていたというか、インターネットにおいて、ちゃんとメディアビジネスをやれてんのはポータルサイトしかなかったんです。
エキサイトに新卒で入社したのが2006年の4月なんですが、実は直前の2005年の年末にライブドアショックがあったんです。つまり僕がネットメディアでのキャリアをスタートさせたのは、ちょうどインターネットメディアの社会的信頼が地に堕ちたときだった。そこから、エキサイトでいろいろやらせてもらって、ビジネスを作っていく力学なんかも覚えていったんですけど、頭のどこかに映像に対する未練がずっとあったんですね。
田原 もう一回、映像制作をやってみたいと?
明石 そうなんです。