(文:山本美織)
韓国発の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)が話題をさらっている。韓国社会にはびこる女性差別に真っ向から切り込んだこの作品は、海を越えて日本の女性にも深い共感を呼び、口コミを中心に発行部数を順調に伸ばし、発売から3カ月で9万部という異例の大ヒットを遂げている。
日本での反響を受け、2月には作者が来日し、東京・新宿で作家の川上未映子さんとトークイベントを行った。
いつも男子より「下」だった
『82年生まれ、キム・ジヨン』は、韓国人の女性作家、チョ・ナムジュさんが2016年に発表した作品。主人公のキム・ジヨンは1982年生まれの33歳で、夫と1歳になる娘の3人家族の主婦だ。出産を機に勤めていた広告代理店を辞め、日々育児に追われている。
チョさんはトークイベントに先立ち開いた会見の中で、主人公を1982年生まれにした理由をこう述べた。
「韓国において80年代は、経済的に発展し、価値観や社会的な雰囲気が大きく変わった時期でした。それまでは多産が基本でしたが、出生数が減り、男児を選り好みして産むようになった。妊娠したのが女児だと分かると、堕胎するケースまであったのです。結果、男女の性比が不均衡になりました」
キム・ジヨンは2歳上の姉と5歳下の弟を持つ3人きょうだいの次女という設定だが、作中では、両親が「3人目も女だったら」と困惑する場面も描かれている。
やがて弟が生まれると、さまざまな場面で弟が優先される。
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