(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
ファーウェイは「シロ」かもしれない
2018年12月1日に中国ファーウェイの孟晩舟(もう・ばんしゅう)・副会長が、米国の要請によりカナダで逮捕されて以降、米国によるファーウェイへの攻撃が激化した。米国は政府機関がファーウェイとの取引を禁じる法律「国防権限法」を成立させるとともに、日本等の同盟国や、英国が含まれる「ファイブアイズ」(機密情報を共有する、英米を中心とした5カ国の枠組み)にも、ファーウェイ等中国製品を排除するよう要請してきた。
日本政府は12月10日、中央省庁や自衛隊が使う情報通信機器について、ファーウェイ等を排除する方針を決めた。12月13日には、ソフトバンクがファーウェイ等の通信基地局を欧州のノキアとエリクソンに置き換えると発表した。
「ファイブアイズ」を形成するオーストラリア、ニュージーランド、英国も、米国に同調してファーウェイを排除する方針を固めた。また、台湾もファーウェイを排除することになった。
このように、米国による攻撃をきっかけにして、世界中でファーウェイを排除する動きが広がっていた。だが、ここにきて風向きが変わり始めている。
英情報当局は「リスクは管理可能」としてファーウェイを排除しない方針を示し、ニュージーランドもファーウェイを排除するか否かは独自に決めると発表した。また、ポンペオ国務長官が東欧諸国に米国の方針への協力を求めたが、スロバキアがファーウェイを脅威とみなさない方針を示しているという(日経新聞2月18日)。
そして、スペインで始まった世界最大の携帯関連見本市「MWC19バルセロナ」の会場で、英携帯通信大手ボーダフォン・グループのニック・リードCEOは2月25日、ファーウェイ排除を働きかける米国は「証拠を欧州に示すべきだ」と指摘した(日経新聞2月26日)。
さらに、東京福祉大学国際交流センター長の遠藤誉先生は、「ファーウェイは中国政府の手先ではない」「ファーウェイはZTEが“米国に売った”ため攻撃を受けている」という見解を示している(拙稿「ファーウェイ、米国の企業秘密を盗んでいない可能性…中国政府とZTEに利用されたのか」を参照されたい)。
そして、ファーウェイの孟副会長の弁護人が、カナダ政府などを相手取り、不当な身柄拘束に対する損害賠償を請求する訴えを起こすことが報道された(TBSニュース、3月4日)。
このように「ファーウェイはシロかもしれない」という可能性が漂い始めている。だとしたら、ソフトバンクは大金を投じてファーウェイ製の通信基地局を欧州製に置き換える必要はないのではないか。ところが、昨年(2018年)、米国で成立した法律「国防権限法」があり、この法律により、ソフトバンクは通信基地局を置き換えざるを得ないと考えられる。