文喜相国会議長が、慰安婦問題は「天皇陛下が謝罪すれば解決する」と指摘しました。文氏と言えば、韓日議員連盟会長も務めた知日派と誤解されていますが、要するに日本のことは知らないのです。天皇陛下が、政治にはかかわらないのだということ、日本人が陛下を心から敬っていることを理解していません。これは国会議長に限ったことではありません。その言い訳で、天皇陛下の「父は戦犯だった」という発言、それは事実と異なるばかりか、けっして看過できない発言です。ここに至っては何をか言わんやです。

2017年5月、文在寅大統領の特使として訪日し、安倍首相と握手する文喜相氏。「知日派」と見られていたのだが・・・(写真:ロイター/アフロ)

 あと3年半、文在寅政権は続きます。その間、日本が妥協しなければ、日韓関係は今以上に悪化する懸念もあります。北朝鮮問題もあるので、韓国とは一日も早く関係改善に動きたいところなのですが、文在寅政権が続く限り、その見込みは薄いと言えます。残念ではありますが、いましばらくは、この冷え切った日韓関係を維持していくほかないでしょう。韓国に対して安易な妥協はするべきではありませんし、安倍首相にもそのつもりはないように見えます。

訪朝になぜ4機も必要だったのか

 韓国との付き合い方を考える上でもう一つ大切な視点は、文在寅政権と将来の韓国とを分けて考えるという視点です。

 つまり、韓国から反日的言動が飛び出してくるたびに、「あんな国とは断交しろ」「韓国は日本に関わってくるな」という声がネットを中心に飛び交っています。そう言いたくなる気持ちもわからなくはありませんが、韓国と国交を断っても日本にとってメリットはありません。

 あるいは「フッ化水素の輸出を止めればいいのだ。日本が製造をほぼ独占しているフッ化水素は半導体製造に必要な物質だから、これを止めてやれば韓国経済はガタガタになる」などという声もしばしば目にします。

 確かに、フッ化水素の輸出を止めれば韓国経済には甚大な影響が出るでしょう。しかし、それを実行したとしたら、韓国の人々はどう思うでしょうか。日本は戦前、軍事力で韓国を支配した、今度は経済力で痛めつけるのか、と反発するのは必至です。せっかく親日になった人々を反日に向かわせることになってしまいます。これはむしろ、文在寅大統領を喜ばせることにもなりかねません。日本にとってのメリットはほとんどないのです。

 われわれが強く抗議していくべき相手は、韓国国民ではなく、文在寅政権なのです。そこは明確に分けて考えなければなりません。

 文在寅政権に抗議するといっても、日本に対しては「積弊清算」で聞く耳も持っていない以上、国際世論に彼らの問題点を訴えてゆくべきでしょう。例えば韓国が国連の安保理制裁に違反しているのではないかという点での追及です。国連安保理は韓国が開城で届け出なしに石油を供給したのは制裁破りだと指摘しました。

 また、海上自衛隊の哨戒機が、韓国海軍の駆逐艦からレーダー照射を受けた際、韓国海洋警察庁の警備艦は、北朝鮮籍の漂流船舶の救助活動を行ったとしていますが、この北朝鮮の船は、海上でいわゆる「瀬取り」をしていて、それを韓国の艦艇が保護していたのではないかという指摘もあります。

 さらに、昨年9月に平壌で開かれた南北首脳会談の際、通常なら大統領専用機2機が平壌に飛ぶところ、どういうわけか韓国からさらに2機が平壌入りしていました。後にその事実が明らかになると、1機には文在寅大統領一行が白頭山を訪問する際に必要な防寒具が積まれていたと説明されましたが、そんなもののために空軍機2機も必要ありません。

 韓国と北朝鮮との接触の際には、このように不可解な出来事がいくつも見え隠れしています。もしも、そうした際に韓国側から国連制裁決議に反する物資が北朝鮮側に渡っていたとすれば、これは国際社会の信義にもとる問題です。

 日本としては、そうした疑わしい状況を正確に把握・分析し、「問題あり」と判断した際には、文在寅政権の制裁違反を国際社会に訴えたらよいのです。
 
 今年3月1日は、韓国の「三・一独立運動」100周年にあたります。文在寅政権は、北朝鮮とともに、さまざまな祝賀行事を検討していると言われています。金正恩・朝鮮労働党委員長が訪韓するという噂もある。いずれにしても、ここで文在寅政権は、日本に対する強硬姿勢のレベルをさらに引き上げてくることが予想されます。多くの韓国国民も、愛国心を刺激され、反日的言動を繰り広げるかもしれません。

 だからといって、感情的に反発するのは日本にとって得策ではありません。文在寅政権には毅然とした態度で応じつつ、日本に対する反発心も抱きながら、実は親日的でもある韓国の人々と、友好的な関係を築いていけるよう努力を続けるべきなのです。それこそが、文在寅、さらにその後ろにいる金正恩がもっとも嫌がる行動なのです。