それでもハイブリッド機開発を目指す理由

 ハイブリッド機が目指すものは、モーターで飛行することによってのみ可能となる効率化によって、余計な重量増を埋め合わせてお釣りがくるだけの燃費向上である。

 現在のジェットエンジンにも、宿命的なデメリットがある。そこを電動化で克服することで、効率アップを実現しようという発想である。

 現在の旅客機を飛ばすエンジンの主流であるターボファンエンジンは、ガスタービンの前にタービンの軸とつながった大きなファンをつけている。

 ファンの生み出す比較的ゆっくりした空気の流れが8割以上の推力を稼ぎ、ガスタービンから排気される速い空気の流れが推力に貢献するのは2割以下である。

 原理上、ゆっくりの空気をたくさん流す方が、速度の速い排気を少量流すよりも効率が高いため、これまでファンをより大きくする開発がされてきた。

 しかし、ファンを大きくするとファンやファンケースの重量がかさむ。そして、ファンの先端の速度が音速を超えてしまい様々な問題が発生し、効率を上げるのが難しくなってくる。

 また、ファンの最適回転速度と、ファンを回転させる動力となるガスタービンの最適回転速度が違うため、現状のジェットエンジンの大半はファンの回転速度が最適になっていない。

 電動化すれば、ガスタービンを発電専門にして、推力をファンだけで生み出すことができ、効率の悪い速度の速い排気を使った推力をなくすることができる。小型のファンを多数並べれば、大型のファンを用いるデメリットを解消できる。

 ガスタービンで発電した電力をモーターに送り、ファンをモーターで回転させれば、それぞれを最適の速度で回すことができる。

 また、電動にすると配置がより自由になる。主翼の先端に近い部分にもファンを配置できる。例えば、右のファンを速く回して、左のファンを遅くすると左に旋回する。