確かに、化石燃料は燃焼を伴うため、熱になり動力にならないエネルギーも多く、エネルギーを動力にする効率は電気の方が何倍も大きい。

 しかし、それを考慮しても、電池でジェット燃料と同じエネルギーを供給しようとすれば何十倍もの重量になってしまう。

 仮に30倍とすると、東京からニューヨークまで飛ぶエネルギーをまかなう電池は、3000トン以上になってしまう。

 国際線用旅客機として普及するボーイング「777-300ER」の最大離陸重量は350トンほどである。全くお話しにならないレベルである。

 旅客機を東京からニューヨークまで飛ばすことができる容量の電池を搭載すれば、飛行機は飛ぶことができる重量をはるかに超えてしまうのだ。旅客機サイズの純電動航空機は、現在の技術水準からすると、あまりに夢のあり過ぎる存在である。

想定されているのはハイブリッド

 旅客機のような大型機を想定した電動航空機は、発電しながらモーターを回し飛行するものである。これは内燃機関であるガスタービンとモーターの双方を搭載するハイブリッド機である。

図2-1 ターボファンエンジンの仕組み ターボファンエンジンは、現在のすべてのジェット旅客機が搭載しているエンジン。ガスタービンで駆動する前部のファンで推力の大半を発生させる。

 電池の代わりに、エネルギー源としてはるかに軽量のジェット燃料を持って飛び上がり、ジェット燃料で発電をして、モーターを回すという発想である。

図2-2 ハイブリッド機の動力の仕組み ハイブリッド機ではガスタービンで発電し、その電力をモーターに供給して、モーターでファンを回す。ガスタービンとファンは機械的につながっていない。