3.米国の長期的低下傾向と多極化の到来
しかし、中国がそれを重視しようがしまいが、中国が改革の推進に成功し、長期安定的な経済運営に成功すれば中国経済は着実に成長を持続し、それに比例して軍事力も強まっていく。
こうした事実は米中2国間の問題にとどまらず、世界全体の秩序形成の長期的な変化と深く関係する。すなわち、米国の一極覇権主義体制は終焉に近づき、世界は多極化体制へと移行していく。
こうした将来の世界秩序の変化は米国内において、すでに1970年代には認識されていた。
それが21世紀入り後、一段と明確に認識されるようになり、ドナルド・トランプ政権はそれを加速している可能性が高い。
元々米国経済は第2次大戦直後の時点では世界経済全体の半分以上を占めていた。
IMF(国際通貨基金)世界経済見通しのデータベース(2018年10月)によれば、平成元年=1989年当時、米国GDPが世界経済に占めるウェイトは28.2%だった。
同年、EUは30.2%、日本は15.3%、中国は2.2%だった。
それが今年(同上IMF見通し)は、米国24.2%、EU22.1%、日本6.0%、中国15.9%と中国以外の国・地域は大幅に低下している(下のグラフ参照)。
世界経済全体に占める国・地域のGDPウェイトの推移