歯ごたえに口触り、進化する食べやすさの測定方法

教科書が通用しない「テクスチャー測定」に挑む

2018.12.07(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

進歩してきたテクスチャーの測定

 食品の特性のうち、食感や口触りなど口の中で起きる食物感覚を「テクスチャー」という。「食感」とほぼ同様に使われるが、食品の側から見るときは「テクスチャー」を使うことが多い。食品のテクスチャーを評価するには、人が食品のテクスチャーをどう感じるかという「官能的な評価」と、食品の持っている「物理学的な性質」がどう対応するかを考える必要がある。ただし、人によってテクスチャーの感じ方は異なり、テクスチャーを評価するのは難しい。

 ポーランド生まれで米国で活躍した食品科学者のアリーナ・ツェスニャクは、テクスチャーに関する用語を整理し、食品の物性と対応させて、体系化し、1963年に世界で初めて「テクスチャープロファイル」を作った。

「やわらかい」「歯ごたえのある」「かたい」と表現される食感は、食品のかたさによるもの。かたさは、一定の変形をさせる力や食品内部の結合力に関わる。また、「ボロボロの」「ガリガリの」といった食感は食品のもろさによるもので、もろさは食品を破砕するときの力、かたさや凝集性に関わる、といった具合にまとめた。

ツェスニャクによるテクスチャープロファイル。(参考:ツェスニャクの論文“Texture is a sensory property”をもとに編集者作成)
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 これに対して、英国のフィリップ・シャーマンは食品を食べたときにどの段階でどのようなテクスチャー評価が行われるかを加味して、1969年にプロファイルをつくった。

レオメーター。左側のプレートに食品を乗せる。「レオ-」(rheo-)は「流れ」などの意味をもつ接頭辞。(筆者撮影)

 現在もこれらのテクスチャープロファイルにもとづいて、食品の物性を測定し、食感の評価が行われている。寒天の場合、ゲル強度や粘度でテクスチャーを評価できる。ゲル強度は、ゲル状食品の強さの指標となる数値で、食品の表面に力を加えて、壊れるまでの力を測定する。

 テクスチャーを評価するための方法や測定機器も開発されている。「レオメーター」あるいは「テクスチュロメーター」と呼ばれる装置は、食品を口に入れたときの食感を解明するために開発されたものだ。あごのように上下する円筒形の部品とプレートで食品をはさんで圧縮し、応力の変化を連続的に測定する。その数値の変化から、かたさや粘り、弾力やもろさなどを解析する。たとえば、食パンとクロワッサンのテクスチャーの違いや、ゆでたてとゆでてから時間の経ったうどんのテクスチャーの違いなどが明確に示される。

 ただし、機器分析によるテクスチャーの評価が人による感じ方を明確に示しているとは限らないので、官能評価も重要だ。いまもなお、多くの研究者がもっとよい方法を探して研究を続けている。

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