さらに、その資料を保管しておこうと思ったら、ファイリングやインデックスを作ったりする作業が必要になります。何よりそのファイルを保管しておくスペースが必要です。これも大いなる「無駄」です。わが社は、顧客に範を示す意味でも、ペーパーレス化を進め、データ保管に切り替えた結果、長く借りていた書類倉庫を解約することが出来ました。

 もっと言うなら「給与明細」です。まだ給与明細を紙でもらっている人は多いと思いますが、ここでもペーパーレス化は進んでいます。データ化し、サーバに上げておく。必要な場合は自分でそれを覗きに行く。中小企業でも、そこまでやっているところもあります。それで十分なのです。恐らく後5年も経てば、給与明細を紙で配ることもほとんどなくなるのではないでしょうか。

 早く取り組んだところは、早く無駄をなくしてその効果を享受できる。取り組まないところは、最後まで非効率な仕組みの中で業務を続けていく。企業の競争力に差が出てくるのは必然でしょう。中小企業の働き方改革は、ペーパーレス化から手を付けることを私は強くお勧めします。

効率化のタネは、全社員一丸となって探せ

 会社の中で「働き方改革」の旗振り役は、経営者か、あるいは人事・総務の担当者であることが多いと思います。しかし人材豊富とは言えない中小企業の場合、その人たちもそれぞれの業務を持ったプレーヤーです。働き方改革プロジェクトになかなか力を割けないという状況が予想されます。

 そういう意味でも、中小企業の働き方改革は、社員全員が主役となって行うという意識を持つ必要があります。

 例えば「捨てられる仕事」は、第一線の社員が日々の業務の中で「この仕事、無駄だな」「こうすれば、もっと効率的にできるのに」と気づくものが非常に多いはずです。それを気付きだけで終わらせず、提案させ、正しく評価してあげる仕組みを会社として作っておくことが必要です。

 もう一つ大事なことは、新しいテクノロジーやソフトを積極的に活用するということです。

 社内のちょっとした連絡事項なら、わざわざ会議をするまでもありません。「だったらメールで」という会社もあるかもしれませんが、パソコンでもスマホでも使える「スラック」のようなコミュニケーションツールや、グループウェアを使ったほうが効率的です。

 また最近は、事務のプロセスをロボット化してこなしてくれるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というソフトが、かなり格安で提供されています。システムの知識が豊富でなくても十分に使いこなせるもので、これを使えば事務処理作業の時間は一気に短縮できます。

 経営者自身がこうした新しいテクノロジーにアンテナを張って導入を検討する、というのは難しいかもしれませんが、若手の中にはこの手の分野に精通している人もいるはずです。そういう若手の意見をどんどん吸収し、取り入れるべきものは取り入れる。若手のそういう提案力、チャレンジ力を評価してあげれば、社内の活性化にもつながります。

 こういう循環を作ってどんどん業務を効率化していける企業こそが「働き方改革」にも成功し、会社の成長も手にできるのだと思います。