「こんなに暗い街だったかな?」

 上海体育場駅で下車して歩きながら、筆者は首をかしげずにいられなかった。

 その場では気のせいかもしれないと思ったのだが、そのあと午後8時過ぎに、高架上を走る4号線に乗って窓から外を眺めると、景色はやはり暗かった。

「やっぱりおかしい」と確信を持ったのは、市内の高速道路をタクシーで走ったときだ。運転手に「上海の人たちはみんな大体何時ごろに寝るんですか」と聞いてみると、「人にもよるけど、11時ぐらいでしょう」との答えだった。時刻はまだ夜10時を過ぎたばかりである。だが、タクシーからかつてあったような街の灯りはほとんど見えなかった。

高速道路から見た上海の街。以前の上海はこんなに暗い街ではなかった

 7年ぶりに上海を訪れたという東京からの出張者も、筆者と同じことを指摘していた。

「路線バスの911線に乗って目抜き通りを見わたしたら、街が真っ暗なんです。2011年に訪れたときの上海は、もっと活気に満ちていました。宴会が毎晩のようにあって、ヘッドライトをつけたタクシーの車列や飲食店のネオンが東京以上にまぶしいくらいでした」

 この出張者は、7年前に勤務していた日系企業が多く入居するオフィスビルを訪れた。すると、「平日の午後6時半なのに、ロビーにまったく人影がありませんでした。これには驚きました」という。元々、中国人は基本的に残業をしない。つまり、終業後に人がほとんどいなくなったというのは、“日系企業”が撤退したということの表れなのかもしれない。

灯りがともらない高層マンション

 上海の夜が真っ暗になっている。

 日が暮れるとあたりが闇に沈むのは、東京の郊外も同じだ。夜に北の荒川や南の多摩川を超えると、街の灯りが一気に減少する。それに近い雰囲気を、筆者は上海で感じた。