苦労して難関を突破して正規職になった社員からの反発も強い。一部社員は、「不公正だ」として憲法裁判所に「訴願」を出した。

 人権が侵害された場合などに使う措置だが、それほど不公正な「迂回入社は許せない」だという意識があるのだ。

 難関を突破して正規職になった社員から見れば、大学在学中も就職活動に一生懸命取り組み、塾にまで通い、場合によっては浪人までした。誰かの口利きで迂回ルートで簡単に正規職になるなど許せないということか。

 それほど、「雇用」を巡っては、ぎくしゃくした雰囲気が強いのだ。

 問題は、この「雇用世襲」がソウル交通公社だけで起きたのではなさそうなことだ。

 韓国メディアは、政府や地方自治体の公企業でも、不透明な採用、正規職転換があったと報じている。

 文在寅大統領は2017年5月に就任すると、最初の外部訪問先として仁川国際空港を選んだ。

 下請けや非正規職の労働者と面談し、「公企業では非正規職をゼロにする」とぶち上げた。

 公企業の社長は、それまで「公企業だからといって放漫経営は許さない。税金を無駄遣いせず効率的な経営をしろ」という強い圧迫を受けてきた。