そこで、保守作業など安全業務にかかわる部門を中心に、外注から「無期契約職」への転換を進めていた。

 「無期契約職」とは、事実上、定年まで仕事ができる。これをさらに「正規職」に転換したのだ。

 韓国メディアによると、無期契約職を採用した際、労組のナショナルセンターが「活動家」を送り込み、正規職への転換を強く求めていたという。

 人事の責任者の妻もこの制度を使って正規職になっていたことも明らかになった。

 これでは、労使ぐるみで「抜け穴採用」をしていたことになってしまう。

正規職への転換は重点政策

 非正規職を正規職に転換することは、文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権が積極的に推進してきた政策だ。

 コスト負担増を嫌がる経営側を除けば、若者など国民の間にも、「正規職への転換」に対する反対はない。問題は、その採用方式が、きわめて不透明だある点だ。

 ソウル交通公社の場合、労組が介入し、正規社員の家族や親戚が優先的に採用になっていたのではないかという疑惑が強まり、強い批判が出ているのだ。

 「文在寅大統領は選挙期間中から、正規職の増加を重要政策に掲げてきた。その趣旨は、質の高い雇用を増やそうということで、これに反対する意見は少ない」

 「問題は、大統領の指示を何が何でも守れとばかり、正規職の数を増やすことにだけ必死な経営陣と、これに便乗した労組、さらに、家族や親戚を入社させようとした社員が出てしまったことだ」

 韓国紙デスクは、こう話す。