トランプ政権は、いわゆる中間選挙が近づいたこともあり、対中強硬姿勢を経済分野だけでなく軍事分野でもますます強めている。
基本的な戦略レベルでは、すでに昨年(2017年)12月にホワイトハウスが公表した「国家安全保障戦略」ならびに本年1月にペンタゴンが公表した「国防戦略概要」で中国に対する強硬姿勢が明示されている。
すなわち、アメリカの国防基本方針は「世界的なテロリズムとの戦いに勝利する」から、「軍事大国すなわち中国とロシアとの軍事的対決に勝利する」へと変針した。とりわけ当面の主たる仮想敵は、南シナ海や東シナ海で周辺諸国を軍事的に威圧しながら海洋覇権を確保しつつある中国である。
トランプ政権がロシアとの中距離核全廃条約(INF)から離脱する意向を表明した動きも、そのタイミングから判断すると、ロシアよりもむしろ中国に対抗する米軍戦力を考慮しての動きと考えたほうが自然である。
局地的軍事衝突が前提となる大国間角逐戦争
中国との軍事的衝突を視野に入れた「大国間角逐」に打ち勝つための準備を固めるといっても、核兵器使用の有無を問わず「第3次世界大戦」に発展するような全面的戦争への突入は何としてでも避けることは確実である。このような大前提が、米国にも中国にも共通していることには疑いの余地はない。
というよりは、むしろ中国のほうがアメリカよりも戦略核の使用や全面戦争への発展を忌み嫌う姿勢が強固であると考えるべきであろう。なぜならば、中国共産党の軍隊であるとはいえ中国人民解放軍の基本的戦略の根底には孫子兵法の伝統が横たわっており、「アメリカのように、敵を威圧するために構築し保持すべき軍事力を剥き出しで行使するのは大馬鹿者の行い」という考えが徹底しているからである。