カリスマリーダーが引っ張るのでなく、フラットに

 ここまで順調に歩んできた「はやぶさ2」。その秘訣を問われた津田プロマネは、「チームワーク」という言葉を頻繁に口にした。

ミッション中もチームの熟練度は上がっていると語る津田雄一プロマネ。

 プロマネとして工夫している点を聞くと、「みんなで考える状況をいつも作っている。それぞれ担当者がいて専門もあるが、一緒の場所でみんなで考える。すると専門でなくても、とんでもないところから意見が出る。できるだけフラットに意見を戦わせ、1つのゴールがみんなの目の前に見えるように心がけている」。

 初代「はやぶさ」では、幾度の危機を乗り越えてきた川口淳一郎プロマネの印象が強かった。津田プロマネとの違いは?

 両者をよく知る吉川ミッションマネジャーによると、「全く違います。川口先生は本当にすごくて何でも知っている。川口先生の言うことに従えばいいだろうというカリスマ的なプロマネ。津田プロマネはみんなでミッションを作り上げていこうという雰囲気を強く出している。そのおかげで非常にいいチームワークになっている」。

 同様に、初号機から関わる久保田教授は「川口プロマネと津田プロマネは、やり方は違うが統率力、リーダーシップは同じぐらいすごい。メーカーや大学の研究者などいろいろな人をうまく束ねて1つの目標に向かわせていく力は、両者とも同じように持っている」と2人の共通点を説く。

「はやぶさ2」からミネルバⅡ1が正常に分離されたことを確認し、拍手するチームメンバーたち。(提供:JAXA)

 前回の記事で津田プロマネが上げた3つのチャレンジのうち、最初のチャレンジはクリアした。10月頭には欧州の小型着陸機マスコットの投下、そしていよいよ10月末には「はやぶさ2」本体が着陸・サンプル採取、という高いハードルが待ち受ける。リュウグウ表面は大きな岩の塊だらけ。着地に失敗すれば探査機はダメージを受ける恐れも。成長するチームが一丸となって、どう難題に立ち向かうのか、乞うご期待。