PM2.5の濃度が高まると、鼻につく不快なにおい、咳や喘息の誘発といった循環器系へのダメージのほか、スモッグの発生により都市交通機関にも影響を及ぼします。まさに公害を引き起こす物質と呼んで差し支えないでしょう。

 この言葉が日本でにわかに脚光を浴びたのは、2013年に中国が主要都市のPM2.5濃度を発表するようになってからです。当時の中国のPM2.5濃度は日本の大気と比べ極端に高く、中国の環境問題の深刻さが日本でも大きく注目されました。特に首都・北京の茶褐色の空や、数百メートル先も見えないほどのスモッグなどインパクトある映像とともに紹介され、中国の大気汚染の凄まじさに恐れおののいた人も多いのではないでしょうか。

 そんな日々から5年経った今、中国のPM2.5はどうなっているのでしょうか。

大気汚染は改善しつつも、データは怪しい

 結論から言うと、この5年で中国の大気汚染は大きく改善されました。

 北京市環境保護局の発表によると、2018年1~6月におけるPM2.5の平均濃度は前年同期比15.2%減の56μg(マイクログラム)。2013年の観測以降としては過去最低値を更新しました。主要構成汚染物質であるPM10(粒径が10μm以下の微粒子)、二酸化硫黄および二酸化窒素はそれぞれ前年同期比で8.2%、36.4%および12.5%ずつ減少し、空気重度汚染日数もわずか8日間に留まっています。

 年間を通してみると、2017年の空気重度汚染日数は2013年に比べ35日間も減少しています。またPM2.5の年平均濃度は、日本を含む世界各国の環境基準値である35μgには及ばないものの、前年比20.5%減の58μgにまで減少しました(下の表)。

北京市のPM2.5関連指標(2013~2015年)

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54163

 ただし、この北京市環境保護局が発表しているデータは少し注意してみる必要がありそうです。

 というのも、PM2.5の平均濃度は2015年までは小数点第1位まで発表していたのですが、2016年以降からなぜか小数点以下を切り上げて発表するようになりました。その影響から、2016年の前年比変動幅は手元での計算値が-9.4%(=73/80.6-1)であるに対し、報道発表された値は-9.9%(=73/81-1)と減少幅が広げられています。