日本では「親日的」とみなされがちな国・台湾にまで設置された慰安婦像。もちろん日本としては看過できない問題だが、無分別な抗議活動は逆効果をもたらす。右翼系活動家の日本人が、あろうことか慰安婦像にキック。この一蹴りが台湾で大問題に発展し、与野党間の政争の材料にまでなる事態に陥っている。1人の日本人の蛮行は、一体なにを引き起こしたのか。ルポライターの安田峰俊氏が報告する。(JBpress)
与野党両党を巻き込む大きな国際問題に
今年(2018年)9月6日、日本の右派系市民団体「慰安婦の真実国民運動」の藤井実彦(ふじい・みつひこ)幹事(当時)が、台湾(中華民国)台南市内の中国国民党施設敷地内に設置されていた慰安婦像を蹴りつけるようなポーズを取った。
この日、藤井氏はもともと、像を設置した台南市議の謝龍介議員(国民党)に対して抗議に出向き、要求書を手渡して像の即時撤去を求めていた。「像蹴り」はその後に発生し、謝議員が自身のフェイスブック上で監視カメラの映像を公開したことで広く知られることになってしまった。
その後、日本台湾交流協会台北事務所(事実上の日本大使館の代替機関)に対する抗議デモが起き、事務所にペンキが投げつけられる事件も発生した。台湾メディアの報道量はかなり多く、事態は民進党・国民党の与野党両党を巻き込む大きな国際問題となっている。