昨年末、米サンフランシスコ市が、民間団体が設置した慰安婦像を正式に受け入れたのに続いて、フィリピンのマニラでも慰安婦を象徴する像が建てられた。
これらの事象に対して現地総領事のロビー活動の不足や政府の対応の遅さを指摘する新聞論調が見られた。
国際社会では国益の対立を背景としてプロパガンダ戦が目に見える形あるいは目に見えない形でし烈に繰り返されている。
眼に見える形で行われているものとしては、上記の米国などでの慰安婦像・碑の建立、朝鮮半島の軍事境界線付近で行われている拡声器による宣伝放送、外国の刊行物への意見広告の掲載、自らの利益を守るための政策決定者への働きかけ(ロビー活動)などがある。
眼に見えないものには、その行為の後に暴露・周知されたものとして湾岸戦争時に世界の耳目を集めた「油にまみれた水鳥の映像」や「ナイラ証言」などがある。
プロパガンダとは、「直接または間接に発信者を利するために、受信者(個人・集団)の考え方や感情、態度、行動などに影響を与えることを目的とした情報発信である」と定義できる。
プロパガンダは、政府や企業、個人によっても実行される。通常は意図的に実行されるが、時には無意識で実行された行為が思わぬ人々に大きな影響を及ぼすことがある。本稿は各国の政府機関の実施するプロパガンダに焦点を当てている。