しかし、平均的な家計にとって値上げは既に限界に達しており、3月に行われるはずだったガス料金引き上げは延期を重ねている。
今日、住民向けガス料金は266ドル/1000m3とEU加盟国よりはるかに安価であるが、ウクライナの平均月給額は330ドルに過ぎない。
ドイツと比べると、ウクライナのガス料金は3分の1、平均月収は10分の1以下であるから、平均的なウクライナ人にとってガス料金がいかに高価であるか理解できよう。
公共料金の値上げは、政権支持率を著しく落とすことになる。
その一方で、改革の不徹底のいくつかは、ポロシェンコの責任といっていいだろう。有力財閥(オリガルヒ)の利権は維持され、彼らの事業に有利な法律や規制が新たに採用されたりしている。
また現役閣僚や政治家、高級官僚の蓄財ぶりや汚職、オリガルヒとの癒着ぶりも相変わらず報道されている。
ポロシェンコが「パナマ文書」に登場したことは記憶に新しいところだ。ポロシェンコ自身、ウクライナ有数の資産家であり続けている。
ポロシェンコ大統領の巻き返しはあるのか
これまでのウクライナ政治のパターンを振り返ると、現職が利用可能な資源を総動員して投票日前までに支持率を回復した例は多い。
その過程で「お友達」新興財閥(オリガルヒ)や地方ボスの資金・動員力や傘下メディアの力に頼ることになり、汚職対策や改革は途中で頓挫することになる。また、有権者の歓心を買うため公共料金も据え置かれたのは前述した通りである。
今日、このような選挙対策に国際的な批判が向けられている。
7月に行われたEU-ウクライナ・サミットでは共同宣言内で「選挙前の期間を含めて、改革のペースは維持されねばならない」と釘を差された。