ジェットエンジンの中心部まで進出
様々な場面で、世界のジェットエンジン生産に参加してきた日本勢だが、ジェットエンジンの中心の中心である高圧タービンはなかなか敷居が高かった。
部品供給の事例はあるものの、ジェットエンジンのコア部分を分担生産することはなかった。
それもそのはずで、この部分は航空エンジン大手が技術開発でしのぎを削る部分である。ジェットエンジンは原理上、燃焼室からタービンに入る高温高圧のガスの温度が高ければ高いほど性能が高い。
民間エンジンにおいても、タービン入り口温度を上げると燃費が向上するので、ジェットエンジン・ガスタービン開発の中心テーマの一つになっている。
タービンそのものの耐熱温度を上げるだけでは足りず、耐熱コーティングや冷却などの合わせ技でタービンの耐熱温度を上げていく。
このタービン入り口温度を上げる技術の中で、日本の高温材料技術は世界トップクラスである。
現在、タービン翼そのものは、ニッケルに様々なレアメタルを加えた超合金と呼ばれる合金でできている。この合金の技術で日本は優れる。
全日空の787に搭載されているトレント1000の、最も厳しい環境にさらされるタービン翼は、日本の物質・材料研究機構(NIMS)の開発した合金によって製造されている。
もう一つの日本の耐熱性素材は、炭化ケイ素繊維である。炭化ケイ素繊維を炭化ケイ素のマトリックスで固めた繊維強化セラミックス(SiC/SiC複合材)が、ジェットエンジン部品に用いられる。
ニッケル基超合金は、ニッケルが重いうえに加えられるレアメタルもさらに重いものが多いため、比重が8~9と重い。耐熱温度も摂氏1150度以下である。一方、SiC/SiC複合材は比重3程度と軽く、素材そのものの耐熱温度も1300度と高い。
超合金をSiC/SiC複合材に置き換えれば、軽量化だけではない燃費削減効果がある。