これらの金品は、ナジブ氏やロスマ夫人など家族や関係者が、1MDBから不正流用した疑惑が持たれており、宝石類が約1億900万ドル、エルメスのハンドバッグが約1200万ドル分、現金とその他の高級品が1億ドル超などに達する。
今後、捜査追及のもう一つの焦点は、ロスマ夫人や義理の息子のアジズ氏などに向けられる。
実際のところ、父や叔父を歴代の首相に持つ家庭に育ったナジブ氏は、温室育ちの良家の“ボンボン”。彼を背後で操って、「カネ、権力、名誉」にしがみついている人間こそ、“影の最高権力者”と言われるロスマ夫人だ。
マレーシアでは、同夫人がナジブ首相を操縦しながら、国政に関与していると批判を受けるほど、政界に影響力を及ぼしてきた。
生前、シンガポールのリークアンユー元首相がマレーシア訪問の際、首脳会談の前日に、ロスマ夫人と個別会談を行ったほど、諸外国政府の情報機関にも彼女の政治的影響力は伝わっている。
そのことで、ナジブ首相の後見人だったマハティール首相とロスマ夫人は“犬猿の仲”。
ロスマ嫌いの急先鋒で知られる同氏は「首相夫人というのは影で夫を支えるもの。ずかずかと表舞台で派手に振舞うのは見苦しい」と公然と批判してきた。
言い換えれば、ナジブ氏とマハティール首相の政争に見えるが実際は、「ロスマ夫人とマハティール首相」の因縁の戦いともいえるのだ。
さらに、大変な浪費家であることから、マレーシアのイメルダ夫人と揶揄される。フィリピンのイメルダ夫人本人顔負けの派手な浪費で国内外でその“名声”を高めてきた。
マレーシアの国民が望んでいるのは、ナジブ氏を操ってきた本命、ロスマ夫人の逮捕だ。