一方、ナジブ氏の逮捕に関しては当初、ハリ・ラヤ(ムスリム人の大祭)の期間(7月14日まで)は宗教的な理由から、控えられると見られていた。

 しかし、マハティール首相は「宗教的タブー」を破り、逮捕に踏み切った。

 背景には、ナジブ氏の逮捕を敢行し、複雑なマネーロンダリングの全容解明を早急に進める固い政治的意志と強いリーダーシップを内外に示すことで、汚職撲滅と政権交代のスムーズな新政権船出をアピールする狙いがある。

 その上で、クリーンな政冶的イメージを前面に打ち出し、外国直接投資などの誘致を進めたい思惑が見え隠れする。

 さらに、ECRL(東海岸鉄道計画)など、公開入札でなく談合で決められてきた違法性の強い中国の「一帯一路」関連の大型プロジェクトの見直しを見据える。

 1MDBのマネースキャンダルを解明することで、ナジブ氏と密接な関係にあった中国政府の化けの皮を剥ぎ、中国政府との交渉を有利に運びたいとするマハティール首相の戦略がある。

 中国は、マレーシアのような負債を抱えるアジア諸国をターゲットに、インフラ整備を低融資で“肩代わり”し、返済不能になった時点で重要な港湾や土地を買収する「経済的植民地化政策」を習近平政権下で進めている。

 アジアの負債を抱える国の多くが、これまでのマレーシアのように腐敗、汚職が蔓延り、民主化が進んでいない国々だ。

 中国は、習国家主席の下、国内的には汚職、腐敗の取り締まりを徹底し、クリーンな政府を目指してきた。