中国とはどんな国なのか、戸惑っている方が多いようだ。ほんの数年前までは貧しい農民、多発する公害、踏みにじられる人権という話ばかりだったのが、ふと気がつけば「世界をリードする中国のシェアリングエコノミー」「中国、脅威のAI技術」などなど、真逆の話題が目立つようになった。
今年(2018年)4月、筆者はルポライターの安田峰俊氏、アジアITライターの山谷剛史氏とともに「中国B級ニュースはなぜ死んだのか? 中国イメージの過去・現在・未来」と題したイベントを開催したが、会場は大入り満員。イベント後も出版社から問い合わせをいただくなど好評をいただいた。これほどの反響をいただいたのは、多くの人が「中国は遅れた国なのか? 進んだ国なのか?」という疑問を抱いていたからだと思っている。
いや、日本人だけではない。当の中国人自身も戸惑っている。
昨年、浙江省杭州市を訪問した際、移動中にタクシー運転手と話し込んだ。中国の先進性の象徴として日本で注目を集めるモバイル決済について聞くと、「その通り! 中国は世界一だ」と胸を張る。では、「いつごろから変わったのか? なぜそう思うようになったのか?」と聞いてみると、途端にしどろもどろとなって、「よく分からない。ずっと杭州で暮らしてきて、世の中こんなもんだろうと思っていたから。先進的だなんて考えたこともなかったけど、最近になって外国の専門家やメディアが『中国はすごい』とほめるのをよく聞くからね。それで『あ、中国すごいんだ』と気づいたんだ。それに杭州を視察に来る人も増えたしね。前にはドイツから来た専門家を乗せたこともあるよ。はるばるヨーロッパから見に来るぐらいだからきっとすごいんだろうなぁ、と」。