食卓にはフランシスが腕をふるった様々な料理が並ぶ。手の込んだ料理もあるが、ここでは前菜になるブルスケッタを紹介したい。ブルスケッタは、イタリア風ガーリックトーストにお好みの具材をのせたものである。みずみずしいトマトとバジルはオリーブ油との相性も最高、玉ねぎのバルサミコ酢炒めは甘酸っぱくくせになる。いずれも、シンプルであるがゆえの豊かさを味わうことができる。

 同じテーブルで同じ食事を楽しみ、語りあい笑いあう。それだけのことなのに、食事を重ねるほどに家族のような連帯感がうまれていく。そのぬくもりが、彼女に少しずつ勇気と自信を与えていく。前菜はコース料理の最初に出され、食欲をそそる役割を持つ。例えるなら、やり直したい人生を豊かなものに導く水先案内となるのが、このブルスケッタである。

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あさりの酒蒸し(深夜食堂)

深夜食堂』は、深夜営業する新宿路地裏の食堂を舞台に、1話完結でマスターと訪れる客の心の交流を描いたマンガだ。2006年にスタートし、現在も連載が継続している人気コミックスだが、小林薫主演でドラマ化や映画化もされたので、ご存知の方も多いだろう。

 午前0時から翌朝7時まで営業する深夜食堂には常連も多い。酔っぱらってへべれけになった状態でやってくるおレンさんもその一人で、注文は決まって“あさりの酒蒸し”だ。熱燗をちびりちびりやりながら、あさりの酒蒸しを楽しむおレンさんを、息子の丈が「ババア、いい加減にしろよ!!」と迎えに来るのがいつものパターンである。

 息子の丈がまだ幼いころ、丈の父親は女と蒸発した。途方に暮れる中ふと入った小さな食堂で、丈があさりの酒蒸しを美味しそうにおかわりする姿をみて、おレンさんは腹をくくる。どんなに苦しくても息子と二人生き抜いていこうと決意した瞬間だ。