人生の大波が来てリセットせざるを得なくなる状況は、映画や本によく描かれている。そして、注意して見るとそのときに出てくる料理が物語で大きな役割を果たしていることがある。

 今回は8編の映画および本を取り上げ、登場人物が味わった8つの料理を再現してみる。詳しいレシピと手順は書ききれないので、別に用意したWebページ(http://officemakimura.sakura.ne.jp/wp2/)を参照してほしい。もちろん、「まったく同じ」というわけではなく、想像した部分、作りやすいように簡略化した部分もある。

前回の記事はこちら
映画や本で登場人物の人生を変えた8つのメニュー 上
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53299

塩ラーメン(四十九日のレシピ)

 熱田良平は2週間前に妻・乙美(おとみ)を亡くした。33年前、5歳の娘を持つ子連れの自分に嫁いでくれた妻の存在は大きく、後悔と寂寞の念から良平の生活は荒れていく。そこに突然、奇抜な格好をした若い娘・井本が現れる。四十九日の法要がすむまで、生活の面倒をみるよう亡き妻に依頼されたというのだ。とまどう良平に追い打ちをかけるように、娘の百合子が嫁ぎ先を飛び出し家に出戻ってくる。

 小説『四十九日のレシピ』のキャッチコピーは、「わたしがいなくなっても、あなたが明日を生きていけるように。大切な人を亡くしたひとつの家族が、再生に向かうまでの四十九日間。」だ。本書は父・良平と娘・百合子のそれぞれの視点で、少しずつ家族が再生していく様子を描いた生まれ変わりの物語である。

 乙美は生活に必要な手作りのレシピカードを家族に残していた。かわいいイラストとともに書かれたレシピを元にした料理が、この作品の要所要所で登場する。