マレーシアの”陰の首相、” カリスマ的指導者のアンワル元副首相。政権交代から2週間、不眠不休の毎日。内外からの訪問者やメディアの取材攻勢の上、ラマダン中(断食中)で、「いつもの精悍さに欠けるかな?」と冗談交じりに、朗らかに話してくれた(筆者撮影)

 人は「彼」のことをカリスマ指導者という。母国のマレーシアにとどまらず、その名はアジアに知れ渡る。度重なる投獄を強いられながらも、20年に及ぶマレーシアの民主化運動を引っ張てきた。

 その彼とは、アンワル・イブラヒム元副首相(以下、アンワル氏)。今回のマレーシアの61年ぶりの政権交代の裏には、獄中の身だったアンワル氏とかつては政敵だったマハティール新首相との和解による打倒ナジブ政権を図った野党連合による共闘があった。

 獄中から自由の身になって、今では、内外から「陰の首相」の期待を背負うアンワル氏は国王の恩赦により約3年ぶりの釈放後、日本のメディアとしては、初めて単独インタビューに応じた。

 その中で、自身とマレーシアの現状や将来、中国や日本などとの外交関係などについて言及するとともに、フィリピンのドゥテルテ大統領、トルコのエルドアン大統領、ゴア元米副大統領らとの会談に向けた外遊も控えていることを明らかにした。

 アンワル氏の自宅は、日本人が多く住む首都クアラルンプールのモント・キアラから車で5分ぐらいのブキット・スガンブットにある。

 政府が国民の約70%を占めるマレー系に与えた居住地が広がり、アンワル氏の自宅周辺には今では高層マンションも建つが、昔からの低所得者層の住民も多い。

 民主化運動の長年の取材でこれまで何度も訪れたことがある( http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38132http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38138http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38139=世界最長民主政権の足元に押し寄せる政治の津波(シリーズ連載)。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40223 渦中のアンワル氏、消えたMH370便機長の自殺説を語る、 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40209 マレーシア機の大捜索で誇示された中国の新たな「海洋強国戦略」。

 タクシーの運転手は必ずといっていいほど、「ここにアンワルの家があるの?」とマレーシア人の多くが、彼の自宅がここにあることに驚きを隠さない。

 もともと高級住宅街に住んでいたが、前の自宅は1998年9月のある日の夜、政府の特殊部隊の侵入により、一部が破壊されたからだ。

 その日とは、経済政策や汚職撲滅などで対立し、マハティール首相(当時)から更迭され、アンワル氏が同首相の退陣を求めて、「レフォルマシ(改革=マレー語)」運動で、約10万人のデモ行進を行った日だった。

 この後、数時間後にアンワル氏の逮捕が発表された。逮捕を命じたのは、マハティール首相だった。

 あれから、20年(今回の釈放はナジブ政権による投獄)。2人は和解し、マハティール首相は選挙で共闘する条件だった「アンワル氏への首相移譲を2年以内」と明言している。