9日投開票されたマレーシア総選挙(下院定数222、5年任期)はマレーシア政冶史上かつてない大接戦となり、マハティール元首相率いる野党連合(希望同盟)がナジブ首相率いる与党連合(国民戦線)を破り、1957年以来、61年ぶりの政権交代を果たした。
マレーシアに歴史的な革命を起こし、今後、域内に「アジアの春」を呼び込むことになるか、注目される。
マハティール氏の野党連合は121議席を獲得し、サバ州のワリサン党や無所属との統合で、計135議席を獲得(10日夕現在)し、単独で下院を過半数占有することになった。与党の国民戦線は79議席と伸び悩み、前回、2013年選挙の133議席から大きく後退することになった。
10日、マハティール元首相は「新政府を樹立する準備に取り掛かる。PKR(人民正義党)のワン・アジザ党首(獄中のアンワル元副首相の妻)を副首相に任命する」と勝利宣言するとともに、組閣のための準備に着手することを記者会見で明らかにした。
マレーシアで最長の22年間首相を務めたマハティール元首相は、同日中に国王の任命を受け、2003年の首相退任から15年ぶりに首相に再登板し、国の舵取りを担うことになった。
ラクヤット(マレー語で「民衆」)が民主選挙で 「マレーシアの61年ぶりの政権交代」を果たすことになり、他のアジア諸国、とりわけ総選挙を控えるタイ、カンボジア、インドネシアの民主化の動きに影響を与えそうだ。
歴史的勝利に導いた野党連合(希望同盟)会長のマハティール元首相は、選挙戦最終日(8日)、選挙区のランカウイ島の別邸で、筆者の単独インタビューに応じた。
インタビューの中でマハティール元首相は、「過半数(112)以上の議席確保を予測している(8日現在)」と政権交代に自信を覗かせた。
同時に、「マレーシア史上最強の野党態勢を築くことができた」と選挙戦を振り返り、マレーシア政治史に新しい2大政党になり得る1ページを開いたと強調。
さらに、政権交代すれば、選挙戦の争点になっていた消費税の廃止とともに、サービス税を復活させ、自分が首相に返り咲いた後は、獄中のアンワル元副首相の国王による恩赦により、「同氏が首相に就任するだろう」と話した。
また、外資促進を妨げていた国営企業の民営化にも「障壁はない」とし、進めていく考えを示した。
20世紀最後のアジアの独裁開発者と称されるが、「独裁開発者であれば、野党の指導者にはなれない。独裁者は首相を辞任したり、(歴代最長の22年間の統治)5度に及ぶ選挙に勝つことはできなかっただろう」と否定した。
自身とナジブを重ね合わす論評については、「ナジブは権力乱用で違法行為を重ねているが、私を含め歴代首相は法に従って、統治を図った」と反論した。
日本の発展をお手本に「ルックイースト政策」を推進した同氏は、「マレーシアは東海岸鉄道計画など中国主導によるプロジェクトを中止すべき」だと強調。
「中国は大国だが、アジアの指導者は卓越した指導力と交渉力を発揮するべき」と中国脅威論への日本などアジア諸国の指導者の統治力に期待を示した。
次ページから一問一答。