米中首脳会談、国際問題での協調を確認 人権問題では相違

ホワイトハウス南庭で行われた歓迎式典〔AFPBB News〕

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 現在、米中間の懸案事項は、大きく分けて、人民元切り上げ、知的財産権を含む貿易摩擦、安全保障と人権保護の4つだが、今回中国側はいずれについても、ほとんど譲歩らしい譲歩を見せていない。実に大したものではないか。

 日本の主要紙の見出しは、「米中、30年の土台築く」(日経)、「米中、核安保協力強化」(毎日)といった好意的なものから、「米中、融和への岐路」(朝日)、「人権・台湾問題では平行線」(読売)といった厳しい見方まで、かなり割れていた。

 しかし、米側識者の中で、今回の胡錦濤訪米が具体的成果を生んだと見る向きはほとんどないだろう。その最大の理由は、2年後に引退を控えた胡錦濤総書記が事実上「レームダック」化しているためだと筆者は考えている。

 過去1年間、胡錦濤総書記の政治的求心力低下は著しい。中国人専門家の友人たちも、国内では既に2012年の共産党指導部交代に向け新たなパワーゲームが始まっており、胡錦濤総書記の影響力は徐々に衰えつつあると見ている。

 しかも、人民解放軍、党内左派イデオローグ、輸出関連業者、国営企業、公安関係者など国内諸勢力は、それぞれ異なるルールに従って、新たなゲームに参入し始めている。

 そもそも、今回胡錦濤総書記がオバマ大統領と「取引」できる余地は非常に限られていたと見るべきなのだ。

「核心的利益」の取り扱い

米中首脳会談、国際問題での協調を確認 人権問題では相違

共同記者会見直前の両国首脳〔AFPBB News

 それにしても、このような「逆風」の中で胡錦濤総書記は実によく頑張ったものだと思う。

 特に、今回筆者が注目した問題の1つは、中国の「核心的利益」の取り扱いであったのだが、ここでも中国は一切譲歩していない。

 ちょっと長くなるが、2009年11月のオバマ訪中時に作られた米中共同ステートメントの該当部分を引用させていただく。

 「主権と領土的一体性の相互尊重という基本原則は米中関係を規定する3つの共同コミュニケの核心であり、米中はこの原則を害するいかなる試みも支持しない。米中は双方の核心的利益の尊重が米中関係の着実な進展にとり極めて重要であることに同意した」

(The two countries reiterated that the fundamental principle of respect for each other’s sovereignty and territorial integrity is at the core of the three U.S.-China joint communiqués which guide U.S.-China relations. Neither side supports any attempts by any force to undermine this principle. The two sides agreed that respecting each other’s core interests is extremely important to ensure steady progress in U.S.-China relations.)