(文:内藤 順)
作者:高野 秀行、清水 克行
出版社:集英社インターナショナル
発売日:2018-04-05
読書会のやり方は人によって様々だと思うが、面白く実施するためにはいくつかの条件がある。たしかに同じような読書量のメンバーが集まり、本をネタに好き勝手言い合うだけでも、それなりの楽しさはあるだろう。
しかしそれを継続的に習慣化していくためには、少なからず妄想のような会話にリアリティが伴ってくる必要がある。HONZの例で言えば、サイエンス本の話に触れながら、ふと感じた疑問に答え合わせのできる状況が整えばグッと面白くなるのだ。だからHONZの朝会にわざわざ大阪からやってくる大学教授の存在には、得難いものがある。
また信じられないようなノンフィクションを前にそれに近しい体験をしたことのある人の話が加わった時にも、盛り上がりを見せることが多い。自分では想像するしかなかったことが、誰かの体験と地続きになることで、一気に自分ごと化するような感覚が味わえるのだ。
そういった意味で本書に収められている読書会は、人選の段階で成功が約束されていたとも言えるだろう。世界の辺境を主戦場とするノンフィクション作家・高野 秀行、そして日本中世史を専門とする大学教授の清水 克行。この2人が互いに8冊の本を指名し、足掛け2年間をかけて語り合った。そのハードボイルドな読書会の模様を収めたのが、本書『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』である。
2人の異なる観点が互いに求め合う
読書会のやり取りを通して、高野は清水に答え合わせを求め、清水は高野に想定外の問いを求める。その引き合う力が、ただの雑談に終わらせない何かを生み出している。さらに選書も、スゴい。『ゾミア 脱国家の世界史』『世界史の中の戦国日本』『大旅行記』『将門記』『ギケイキ 千年の流転』『ピダハン「言語本能」を超える文化と世界観』『列島創世記』『日本語スタンダードの歴史』という実にディープな8冊。正直、僕が読んだことがあるのは2冊のみであった。