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(文:堀内 勉)

「日本画とは何なのか?」この問いに正面から答えられる人がどれだけいるだろうか。

 日本画という芸術を成り立たせているのは、膠(にかわ)や墨や顔料などの日本画材(グルー・ペインティング Glue painting)なのか、日本画様式(ジャパニーズ・スタイル・ペインティング Japanese style painting)なのか、あるいはその両方なのか、もしくはそれ以外のものなのか。

 例えば、浮世絵と日本画の関係はどう理解したら良いのだろうか。西洋の画家たちが取り入れたような、浮世絵の大胆な構図法やデザイン性などは、近代における日本画とはほとんどつながりがない。特に、浮世絵を代表する喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳らの影響は、河鍋暁斎や小林清親らには見られるものの、それは明治初め頃までのことで、近代以降の日本画では、誇張と斬新さを売り物にするような浮世絵的な表現はむしろ忌避される傾向にあった。

 そうした意味で、この『日本画とは何だったのか 近代日本画史論』は、近代日本画の本質を知る上での決定版と言える。私のような素人には、これまで「日本画」とは何なのかがサッパリ分からなかったが、本書では多くの日本画家をきめ細かく取り上げ、歴史的背景とともに丁寧に紐解いてくれているので、かなり頭が整理できた。

 哲学者の西田幾多郎が、「我々の歴史的行動はすべて表現作用的である。芸術はその特殊なる場合に過ぎない」と述べているように、日本画とは、日本という国家における近代性とは何だったのかという歴史的背景について、芸術という側面から光を当てたものに他ならないのである。

「日本画はクレオール」

 本書を知ったのは、世界的な現代美術家の村上隆氏がFacebookで取り上げていたからである。本書の日本画通史の部分については絶賛していたが、結論の部分には批判的だった。日本画の再興を促すような強いメッセージや具体的な行動指針がなく、淡々と事実の記述に終わっている緩さに不満を感じているようだ。六本木ヒルズの森美術館の誕生と軌を一にした村上氏の大躍進をずっと見てきた身として、確かにその熱い思いは本書の淡々とした結論を凌駕するものである。