しかし、店舗で働く人たちにとって引っ越しを伴う異動は大きな負担になるどころか、退職のきっかけにもなりかねない。そのため、「地域限定」の正社員区分を設けたのだという。

 もっとも、地域限定は、これまでの正社員と賃金などで格差をつける狙いがあるのではないかというひねくれた見方もできる。しかし、これには人事部としての考え方があるのだという。

フレキシブルな働き方を求める女性

 「ファンケルの店舗で働く人たちは女性がほとんどです。結婚、出産、育児を考えるとよりフレキシブルに働ける環境が大切です。地域限定正社員にはそういう働き方の多様化を目指した狙いもあるのです」(人事部の戸塚弘子さん)

 また、ファンケルでは4月から本社や工場で働く契約社員やパート社員を無期限労働契約にすることに決めた。

 「これまで契約期間はありましたが基本的には更新を前提にしており事実上の無期限契約でした。今回はそれを制度的にもはっきりと無期限と定め、長く安心して働いていただける環境を整えました」(熊谷課長)

 契約社員、パート社員の区分を残したのは、「社員にとって働きやすい環境は様々で、より多くの選択肢を残しておきたかったから」(人事部の矢沢絵里菜さん)という。

 「女性を含めた多様な人材が、働きやすい環境とはいったい何か。今回の改革にあたっては数年かけて人事部で徹底的に検討しました」(矢沢さん)そうである。

 また、ファンケルでは昨年4月から定年の改革にも踏み切っている。

 正社員は60歳で定年、希望に応じて65歳まで嘱託として再雇用してきたが、65歳を超えても健康で意欲があれば年齢に関係なく働き続けられるようにしたのだ。パート社員、契約社員も同様に65歳以降でも働き続けることができる。