一方でこうした風習に強い抵抗感を示すのは、まずはもちろん中国共産党だ。加えて、先進国的で垢抜けたライフスタイルを送っている都市部の中国人たちである。鬧婚については、国務院傘下の中国新聞網や国営テレビCCTVなどが「悪習」として批判的に報道しているほか、またネット上の大手質問サイト『知乎』などにも数多くの批判的な意見が投稿されている。

 ただ、ネットの投稿を観察すると、都市部の住民と思われるユーザーが「鬧婚は当事者にとって耐え難いはず」「封建的陋習(ろうしゅう)だ」と非難している一方で、農村から書き込んでいると見られるユーザーが「うちの村ではそこまで悪いことはない」「これも祝福の形だろう」と擁護するなど、意識のズレも見られる。

 鬧婚は数百年来の習慣であるうえ、娯楽の少ない地方社会では特別な日をきっかけにハチャメチャをやって遊べる貴重な機会でもあるため、なかなか根絶は難しいのだろう。結婚式での陽気な悪ノリ行為それ自体はあながち非難されるべきものでもなく、あくまでも「どの程度から先がやりすぎになるのか」という問題であることも、規制を難しくしている。

 今年2月末、国家主席の任期撤廃を打ち出して独裁体制をさらに固めた習近平政権は、追って開かれた第3回党中央委員会全体会議(三中全会)でもお決まりのスローガン「中華民族の復興」を主張。ナショナリストの習近平は、自身が演説で引用した中国古典のアンソロジーを刊行させるなど、中華民族の伝統にも強いこだわりを持つ人物である。

 しかしながら、鬧婚やストリップ葬式のような泥臭すぎる習慣も、やはり「伝統」の延長線上にある存在には違いない。為政者から見れば好ましいとは言い難いこうした習俗に、中国の当局が今後どう向き合い、どのように処理していくのか、筆者は個人的には大変気になっている。