これ以外に、新婦や付き添いの女性に対する鬧婚もなされており、なかにはエスカレートするうちに過度のセクハラ行為に発展する例もあるようだ。極端な事件では、2008年5月に河南省鄭州市郊外で、地元の若者4人が新婦の付き添いの女性にいたずらを続けているうちに歯止めが効かなくなり強姦行為に発展。逮捕されている。

都市部の住民にとっては「イヤな伝統」

 鬧婚の起源となる話は後漢の時代の文献に記載があるともいうが、諸説があり正確にはよくわからない。日本でも一昔前まで、披露宴の余興で男性友人らが下品な余興をおこなったり、新郎を胴上げしてわざと地面に落とすような危険ないたずらがあったことを考えれば、新郎新婦を荒っぽい方法で祝福する行為は、泥臭くて濃厚な人間関係が存在する社会では国家や時代の別を問わず広く見られるものだろうと考えられる。

 ただ、明清時代の地方文献を確認すると、過去の中国の読書人階層の人たちがこの「鬧婚」を嘆き、強く問題視するような記述をしばしば残している。想像するに中国のローカル社会においては、日本での結婚披露宴の悪ノリのレベルでは済まないような並外れて豪快な祝い方が、数百年以上にわたっておこなわれてきたのかと思われる。

(余談ながら、現在でも中国中部・南部の農村地帯や台湾の一部では、大往生した高齢者の葬儀の際になぜか女性を呼んできてストリップをやらせたり、芸人や歌手を呼んでパフォーマンスをやらせる風習が存在する。人間が結婚するにせよ亡くなるにせよ、非日常的なイベントの日にやたらに大騒ぎをするのが、土着的かつ伝統的な中国の農村社会の習慣なのだ。)