疲労と睡眠不足に孤独感が募っていると、心も萎縮しやすい。数カ月ぶりの他人との会話ともなると、普通の会話をするのでもリハビリがほしいところ。だから、他者の会話の中に飛び込むための心理的ハードルはいやが上にも高くなる。そんな心理状態の中で「公園デビュー」を果たすことは、練習もろくにせずにオリンピックの舞台に出てメダルを取れと言われているような、無茶な状態だとも言える。

「公園デビュー」が深刻な問題だと捉えられているのは、以上のような事情があるからだろう。

自然に公園デビューを果たす方法

 ところが、うちの嫁さんを観察していると、いともあっさり「公園デビュー」を果たしていた。嫁さんは人並みに気後れもするし、上記のように、疲労、睡眠不足、孤独感も持っていた。なのに「どうしてスムーズに公園デビューを果たせたのだろう?」と観察していたら、面白いことに気がついた。

 よその子に感心し、驚いていたのだ。息子に語りかける形で「わあ、あのお兄ちゃん、足が速いねえ」「わ、あのお姉ちゃん、滑り台をヒューンって滑ったよ。すごいねえ」と嘆声を上げていた。

 自分が注目されていると分かった子どもたちは、ますますハッスルしてかっこいいところを嫁さんに見せようとする。「ぼく、こんなこともできるよ!」と話しかけてくる子も出てくる。

 すると「その子、おばちゃんの子?」と聞いてくる子が出てくる。「そうなの。この公園初めて来たんだけど、うちの子と遊んでやってくれる?」「いいよ! おいで!」こうして息子は自然と子どもたちの輪に入れてもらった。

 そのうち、うちの子がよその小さい子と遊ぶなんて珍しいと思いながら、嫁さんに声をかけてくる。嫁さんは遊んでくれて嬉しいので「遊んでもらっちゃって、ありがとうございます」と素直にお礼が言える。「どこに住んでるの?」という先方のお母さんの質問から始まって、自然に会話が弾んだりしていた。私はその様子を見て「すげえなあ」と驚いていた。