通常通りの仕事を続ける

森本登志男著『あなたのいるところが仕事場になる』(大和書房)。

 テレワークの大きな特徴は、その名の通り、場所や時間を選ばず業務が可能であるという点だ。そのため「働き方改革」の代表例として、働き手側の利点に注目して語られることが多い。だが、組織にとっての導入の利点もある。それは事業継続性(BCP:Business Continuity Plan)が向上するという点だ。

 今回の大雪のような、いわば緊急事態においても、可能な限り通常に近い業務を継続することができる。もちろん、そのような事態なら仕事自体を休みにする選択もあり得るが、公的機関やインフラ関係など公共性の高い組織はそうも言っていられない。

 そして、それは大雪や台風のような自然災害に限った話ではない。

 2020年の夏には東京で56年ぶりのオリンピックが開かれることになっており、その間は世界各国から、多くの人たちが東京を訪れることが予想されている。当然、その影響は多くの社会人が通勤で利用する公共交通機関にも及ぶと考えられる。鉄道事業者各社もさまざまな対策を講じるだろうが、通常とまったく同じような通勤ができるとは思わない方がよいだろう。

 たとえば、2012年のロンドンオリンピックでは、交通の混雑が予想されたことから、ロンドン市内の企業の約8割がテレワークを導入した。その結果、大きな混乱もなくオリンピック期間を終え、生産性や働き手の満足度が向上したという。

「こうした成功事例にならって2020年まで、首都圏の企業がテレワークに取り組むことは、きわめて価値のある試みであり、必要性はうすうす感じながらも、実施への本格的な検討を先送りしてきた企業をその気にさせる効果に大いに期待しています」(同書より。以下同様)