(2)強い皇帝が現れた時に対外侵略が行われる。漢の武帝、明の永楽帝、そして清の乾隆帝の時に、大規模な侵略が行われた。そして、明の永楽帝が亡くなるとベトナムが独立を回復したことからも分かるように、中国との関係を考える際には「強い皇帝」がキーワードになる。

(3)実は中国軍は弱い。小国ベトナムを相手にして、ここ1000年ほど負けっぱなしである。特に船を用いた戦いに弱い。大陸国であるために、船を乗りこなすのが苦手だ。現在のハロン湾周辺の河口域で行われた戦において、ベトナム側の同じような戦法に引っかかって何度も負けている。

(4)小国ベトナムは、勝利した後に素早く使者を送って、へり下る形で和睦している。冊封体制の下で生きることを選んだと言える。冊封体制下で生きることはメンツを失うことになるが、中国から派遣された代官の暴政にさらされることはなくなる。朝貢しなければいけないが、お土産を持って行けばそれに倍するお返しをもらえたことから、名を捨てて実を取る選択と言ってよい。

尖閣諸島をめぐる争いは緒戦が重要

 幸いにして、中国と日本の間には海があったために、中国大陸に新たな王朝ができるたびに攻め込まれるなどということはなかった。だが、近年は尖閣諸島を巡って対立が続いている。

 そんな日本にとって、ベトナムの歴史から学べる最も重要な教訓は、中国の攻勢は長期間続かないということである。強い皇帝が出現して対外強硬政策を採用しても、代が変われば政策は変更される。せいぜい30年ほど時間を稼げばよい。

 中国は大国、ベトナムは小国。だから、一度や二度、中国が部分的な戦いに負けたとしても、再度大軍を派遣すればベトナムを打ち破ることができたはずだ。しかし、中国は負けた際に再度大軍を派遣することはなかった。対外戦争に一度でも敗れると内政が不安定化して、大軍を派遣することが難しくなるためと考えられる。