TLCのCEOであるウィリアム・アダムズ氏(写真右)とプレジデントとして活躍するワーキングマザー、ベッツィー・レザーマン氏(写真中)

 アメリカを拠点に、世界中に大手企業をクライアントに持つエグゼクティブ専門コンサルティングカンパニー「The Leadership Circle」(以下、TLC)。前回は、プレジデントとして活躍するワーキングマザー、ベッツィー・レザーマン氏にワークライフバランスの秘訣を聞いた。

前回記事:主婦から社長へ「両方犠牲にしないキャリア」とは

 今回は、TLCの創業者でありCEOのウィリアム・アダムズ氏が、専業主婦だったレザーマン氏をパートナーに選んだ理由、時間的な制限がある従業員を有効に活用し、組織の利益につなげる手法について語る。

働き方の決定権は雇用される側にある

——TLCの経営陣の一人として、ベッツヴィー・レザーマン氏を選ばれました。彼女はマーケティング事業で起業するなど優秀な経歴を持つ人材ではありますが、それまで数年間専業主婦としてキャリアのブランクを持っています。しかも、働く条件として、完全なテレワークやかなりフレックスな労働時間を要求したと聞きました。それでもなお、レザーマン氏を経営陣に選ばれた理由はなんですか?

ウィリアム(ビル)・アダムス氏(以下、ビル) 1つには、長年のビジネス上の付き合いから、彼女があらゆる点において非常に優秀な女性で、会社の利益になるということがわかっていたからです。リーダー育成のコンサルティング会社を立ち上げる際、彼女の経験や人柄、コミュニケーション能力や強さ、経歴やバックグラウンドが必要になるというのは確信していました。

 同時に、彼女が一人の人間として、特に2人の少年の母親として、その務めを果たしたいという強い思いを持っていることも知っていました。そして数年間育児に専念することで、彼女の良い母親であるという自信も培われています。私がするべきことはその「境界線」に踏み込まず、お互いにとってベストな働き方を見つける助けになることだけでした。

——母親として、子育ての時間を優先したいと感じる人材であっても、彼女を雇用することで、会社としてメリットがあると判断したということですね。

ビル もちろんその通りです。ベッツィーは仕事でも成功し、同時に良い母親でいたい、という欲求がとても明確です。仕事と家庭、そのどちらも犠牲にするつもりはない。その意思が今もこれからも変わらない。そこに揺らぎがないのです。彼女の言う「良い母親」というのは、時間的に物理的に、子どもが必要とする時にそばにいる、ということを指していました。育児の時間を犠牲にする気は彼女にはなかった。そこがはっきりしているからこそ、では、どういう条件があればベストパフォーマンスができるかという基準が非常に明快だったのです。

 これはともに仕事をする上でとても重要なことです。どちらも犠牲にせず、自身が良いリーダーでありながら、良い母親でもあり続けられている。彼女のその意思を継続する力に、私自身が学ぶことは多くあります。

——経営者ではなく雇われる側が、自らの仕事の仕方を決めるということですか。

ビル これはベッツィーだけでなく誰にでも言えることです。自分の人生にとって大切なものを明確にし、そこに必要な時間や労力を把握する。それを経営者に伝えることは非常に重要です。経営者もまた、一人ひとりの従業員の人生を把握することに多くのエネルギーを注ぐべきだと私は考えています。