TLCのプレジデント兼ヨーロッパ/アジア・パシフフィック部門の責任者として活躍するベッツィー・レザーマン氏(写真中)

 ここ十数年の間に、結婚し、妊娠し、出産しても、女性が自分のキャリアを続けることが当たり前になってきた。女性の管理職も増え、ワーキングマザーの活躍は一見目覚ましい。内閣府男女共同参画局は2020年までに指導的立場の女性を30%にするという「2020年30%」計画を発表した。

 しかし、いまだキャリアを追求するワーキングマザーたちは、家庭の中での「犠牲」を強いられている、とは言えないだろうか。また企業側にとっても、ワーキングマザーを活用することが自社に取って「重荷」になってはいないだろうか。

 育児と仕事、両方を手に入れたいと思うことは、今や多くの女性たちの願いだ。しかし、そこには少なからざる、「時間的、物理的制限」がつきまとうのも確か。いかにその葛藤を乗り越えていけばいいのか、そして日本企業はこうした働き手としての母親をどう、利益に変えていけばいいのか。

 今回、管理職として活躍する女性ロールモデルの一人として、アメリカ、ミネソタ州在住のベッツィー・レザーマン氏、またその上司でありユタ州に本社を持つグローバルコンサルティングカンパニー「The Leadership Circle」(以下、TLC)のCEO、ウィリアム(ビル)・アダムス氏にインタビューを行うことができた。

 前半は、2012年よりTLCの経営に関わり、現在はプレジデント兼、ヨーロッパ/アジア・パシフフィック部門の責任者として活躍するベッツィー・レザーマン氏に働く母親の視点での仕事術について聞く。

 レザーマン氏は1998年にミネソタ州立大学の心理学部を首席で卒業後、アパレル系のコンサルティング会社に就職。その後、ファッション業界のPR会社を設立しCEOとして活躍。しかし、2009年から2012年の4年間、当時4歳と2歳の2人の息子のために、完全な専業主婦としての時間を過ごした。

 有能でキャリア志向の女性が、なぜ専業主婦という道を選んだのか、そのブランクをどう乗り越え、現在のキャリアに就いたのか、そして育児との両立をしながらどのように結果を出し続けているかについて聞いた。

完全テレワークのプレジデント

──あなたは現在、グローバル企業TLCのプレジデントとして世界を股にかけて活躍しています。まずは現在の仕事内容について聞かせてください。

ベッツィー・レザーマン氏(以下、ベッツィー) わが社は世界中にクライアントを持つエグゼクティブ向けのコーチング会社です。私は、ヨーロッパとアジア・パシフィック部門のリーダーとして、各国のクライアントに向けたエグゼクティブ向けコーチングのプログラムを開発し、開催しています。

 2週間に一度は出張があり、3~4回に一度は海外出張で数日間家を空けます。先週もギリシャにコーチングワークショップのために出張し、2万9000人の従業員を抱える世界規模の組織のエグゼクティブにリーダーシップのコーチングを行ってきました。ギリシャは初めて訪れましたが、すごくいい手応えを得られましたよ。それ以外の日は、ミネソタ州ミネアポリスにある自宅で仕事をしています。

ワークショップで登壇中のベッツィー氏

——貴社のオフィスは、ユタ州にありますよね。完全なテレワークということですか?

ベッツィー そうです。こういう働き方をしていることは本当に恵まれていると思います。出張以外は、自宅で仕事をしている夫が子どもたちの面倒をしてくれています。時には、夫や子どもを連れて海外出張に行かせてもらうこともあります。社内の理解と家庭内のサポートにも恵まれている。感謝しかありませんね。

——出張以外はどのようなタイムスケジュールで仕事を?

ベッツィー 朝は早くて、4時半に起床し、6時過ぎ位まで1〜2時間仕事をします。海外とのやりとりも多く、本社オフィスがあるユタ州とも1時間の時差があるので、この時間帯が最も効率がいいんです。アジアやヨーロッパのクライアントとスカイプミーティングをしたりフォローアップをしたりします。本社のスタッフが出社する前に、懸案事項へのメール返信などもこの時間に済ませます。

 その後は、7時過ぎに夫が作ってくれる朝食を皆で食べ、子どもたちを学校に送って行きます。8時半頃から14時半までまた仕事をし、1時間は子どもたちの宿題や習い事に付き合います。その後もまた少し仕事をすることは多いですが、基本的に16時以降は秘書と共有のクラウドカレンダーでスケジュールをブロックしています。ミーティングや電話は基本的に入れません。