「家庭を顧みない母親」から専業主婦に

——16時に完全に仕事を終えるとは、徹底したタイムスケジュールですね。現職につく前は、専業主婦をしていたということですが、今も家族との時間を非常に大切にしていることがよくわかります。ただ経営陣でありながらそのような働き方ができるというのが、正直驚きです。

ベッツィー 私も最初からできていたわけではありません。以前、自分でマーケティング会社を経営していた頃は、早朝から深夜まで延々と働き、それこそ連日の出張もこなしていました。まさに「家庭を顧みない母親」だったんです(笑)。まだ子どもたちが未就学の幼児だった頃です。

 当時私は仕事一筋で、とにかく自分が働いていいお金を稼ぐことが、家族の中での自分の役割で、それが家族を幸せにすると思いこんでいました。でも、実はそうではなかったんです。

——それに気がついたのは何かきっかけがありましたか?

ベッツィー 過労がたたって、健康状態にも支障が出て、状況を変えるには仕事を辞めざるをえなくなったんです。でも同時に、夫や子どもたちが私に求めていたのは、仕事で高収入を得ても疲れ切っている妻や母親でなく、もっと健康で「そこにいる」家族としての私だったと言われ、気がついたのです。新鮮な驚きでした。仕事をがむしゃらにしなくても私は家族といるだけでいいんだって。それからは周囲にこう言ってました。「もう、充分働いたし、二度と仕事はしない。専業主婦になって子育てをする」って。本当に心の底からそう思ってたんです。

——若くして起業されて、社長としてもビジネスで成功されていたのに、完全な専業主婦になったことで、自分の中に葛藤が生まれませんでしたか? 仕事にまた戻りたいという気持ちになったり、社会の中で取り残されているというような気には?

専業主婦の4年間に家族との時間を心底楽しむ機会を得たという

ベッツィー それが、全く! ヨガをしたり、ただ子どもたちのそばに居たりするだけでいいんですから、本当に楽しかった。夫も協力的でしたし。それまでのプレッシャーやストレスから解放されて、心底ほっとしていたんですね。実際、ストレスや睡眠不足を解消して肉体的にも健康を取り戻すまで、1年かかりました。その後は、学校のPTA活動やボランティアに積極的に参加し、病気のクラスメートのために膨大な募金集めに力を入れたり、課外授業を企画したり、そんなことをしていると、社会でもちゃんと自分の居場所はあると思えたんですね。だから、本当に本気で・・・仕事に戻りたくはなかった(笑)。

——専業主婦として子育てをすることを100%楽しまれていたのですね。

ベッツィー ええ。そして、仕事で良い結果を出すことと同じくらい、私にとっては良い母親であるということが大切だと気がついたのです。そのために、私と私の家族にとっては、ということですが、一緒に居る時間を持つことはとても大切なことなのだと気がついたんです。この数年で、母親としての自信がついたのだと思います。これは大きかった。

——しかし4年経ち、結果的にはまた復職をされました。どんな心境の変化があったのですか?

ベッツィー 私自身は満足していたつもりだったのですが、周りからは「あなたは外で働いた方がいいよ」とは言われていました。そして、ある時、今の上司であり当社のCEOのウィリアム(ビル)・アダムスから連絡を受けたんです。彼は私が新卒で入った企業のコンサルティング部門を作った人物で、20年来の仕事仲間でした。新しい会社を始めたから一緒にやらないか、と打診してくれました。最初は断ったのですが、提示されたポジションが、自分のためにあるような完璧なものだったのです。