「三つのポリシー(方針)」という言葉をご存知だろうか。一般の方には馴染みがないとは思うが、今や大学関係者であれば、誰もが知っている。大学の理事はもとより、学部長や学科長といった多少ともマネジメントに関わる教員であれば、できれば神棚に奉っておきたいと思っているだろう。
なぜなら、それが「タテマエ」の領域を踏み越えて、大学教育の「現場」をかき回すようになると、相当に厄介な代物であることに気づいているからである。実際、近年の文部科学省による高等教育政策は、三つのポリシーを「ホンネ」として活用させることに躍起になっているので、事態はなおさら悲観的である。
さて、三つのポリシーとは、いったい何なのか。それは、大学教育にいかなる影響を与えるのか。今回の記事では、この点について論じてみたい。
三つのポリシー(方針)とは?
端的に言えば、現在、各大学が策定し、公表することを義務づけられている「ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)」「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)」「アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)」のことである。
それぞれ、中央教育審議会の大学分科会大学教育部会が作成した(三つのポリシーの)「策定及び運用に関するガイドライン」(2016年)によれば、以下のように定義されている。
【ディプロマ・ポリシー】
各大学、学部・学科等の教育理念に基づき、どのような力を身に付けた者に卒業を認定し、学位を授与するのかを定める基本的な方針であり、学生の学修成果の目標ともなるもの。
【カリキュラム・ポリシー】
ディプロマ・ポリシーの達成のために、どのような教育課程を編成し、どのような教育内容・方法を実施し、学修成果をどのように評価するのかを定める基本的な方針。
【アドミッション・ポリシー】
各大学、学部・学科等の教育理念、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーに基づく教育内容等を踏まえ、どのように入学者を受け入れるかを定める基本的な方針であり、受け入れる学生に求める学習成果を示すもの。
* ディプロマ・ポリシーは、これまで「学位授与の方針」と日本語表記されてきたが、このガイドラインでは「卒業認定・学位授与の方針」へと変更している。ただ、前者の方がすでに定着した表記であるため、本稿でもそれを踏襲している。