もちろん、その道もあるのだが11月から3月まで冬に閉ざされた時期に仕事がないなどの問題があって難しい。
つまり農家の経営を根本から見直さない限り、同じ作物を作る大規模化は90ヘクタールが壁となるというのが今野係長の見立てだ。
更別村で農業の大規模化が進むのにはいくつかの理由がある。
農地がどんどん大きくなる理由
まず最初に挙げられるのは、農家の人たちがひと際農業生産に熱心だということだろう。少しでも良いものを少しでも安く作りたい。その気持ちが大規模化へ向かわせる。
2つ目は土地が手に入りやすいことだ。後継者がいないなどの理由で農家が廃業を決めたとき、その農地は隣り合った農家が優先して購入できる権利がある。
更別村ではそのような理由で農地が売りに出されると、すぐに近隣の農家に買われてしまうという。都会から移り住んで農家を営もうとしても、ここでは農地が手に入らない。自然と大規模化が進んでいくのだ。
以前、北海道の名峰・羊蹄山の麓にある真狩村(まっかりむら)を紹介したことがある(「農家が減っても農地は減らない、真狩村の強い農業」)。この村でも農地は出てくるそばから売れてしまう。
高級食材の「ゆり根」の大産地として農家の意欲が非常に高く、よそ者が新規参入する余地がないのである。農業の大規模化は農家の意識が高い地域の特徴の1つと言えるかもしれない。
3つ目の理由は当然だが大きな農地を買えるだけの経済的余裕がある点だ。農業でしっかり稼いでいるからにほかならない。