しかし、仮に総量を抑えることに成功し再配送率を減らせたとしても、これまでのペースで宅配便取扱個数が増加し続ければ、今後5年間で宅配便は約4億個も増えることになる。このままのモデルでは立ち行かなくなることは明白だ。

【2】シェアリングエコノミーが日本の宅配を変える

(1)消費者も宅配ネットワークの一部になる時代

 誰が荷物を運ぶのか──。従来であれば、宅配便を運ぶのは大手宅配業者ほぼ一択だった。日本では宅配業者が地域によって分立しておらず、大手宅配業者が日本全国の宅配を一律一手に担っていたからだ。

 しかし、近年、EC事業者からの依頼を背景として、従来宅配を請け負っていなかった中小の運送事業者の配送機会が拡大している。さらに一歩進むと、アメリカでは、アマゾンの荷物を学生などの一般人がアルバイト感覚で運んでいる。このように、宅配業者や運送事業者のみならず、一般消費者も配送を担う時代がすぐそこにやってきている。

 何も海外だけの話ではない。日本でも一般人が荷物を運ぶ試みが既に始まっている。2016年9月にサービスを開始した「UberEATS」(フード配送サービス)では、自転車や原付バイクを使って一般人によるクラウドデリバリーが実際に行われている。

(2)日本で広がるクラウドデリバリーへの期待

 宅配クライシスの解決で最も重要なのは、宅配を含む近距離輸送の効率化である。そして、海外では近距離輸送にシェアリングエコノミー(共有型経済)を活用するケースが広がっている。

 その最たる例が、小売事業者やEC事業者が、物流事業者を利用せずに、独自の配送網構築を行っていることである。例えば、スーパーマーケットチェーンのウォルマートは、店舗に訪れた買い物客に、商品割引と引き換えに配送を依頼している。配送に外部のリソースを活用すると、車両や配送員を自社で確保する必要が無いので、物流網を構築するために必要なコストは大幅に少なくなる。