【1】このままでは立ち行かなくなる宅配ビジネスモデル
(1)宅配ビジネスモデルの限界
3分あたり1個。この配送スピードが、現在、過密な都市部の宅配に求められている。今や都市圏で1人の配達員が宅配する荷物は1日に200個を超えると言われており、8時間絶え間なく配送したとしても、荷物1個あたり3分以下のペースで配送しなければ間に合わないのだ。これほどまでに配送スピードが求められるようになったのは、アマゾンをはじめとしたECの急成長を背景として、宅配便取扱個数が増加したからだ。
現在、日本でやり取りされている宅配便の個数は年間37.5億個(2016年度)にのぼる。1人あたり年間30個、月あたり2~3個をやり取りしている計算になる。
(2)総量規制は問題への解になるのか
日本ではEC化率(注)はまだ5.4%程度(2016年)にすぎない。しかし、すでに宅配便の配送キャパシティを超えた荷物を運ばざるを得ない状況となりつつある。荷物の配送遅れや配送員の長時間労働の常態化など、正常なオペレーションが行えなくなる「宅配クライシス」が顕在化している。
(注)EC化率:実際の店舗を含むすべての商取引金額(商取引市場規模)に対するEC市場規模の割合
解決策の1つとして、今年、ヤマト運輸は前期比で約8000万個減らすという総量規制を発表した。しかし、その後に発表された第一四半期の報告書では、「宅急便」の数量は前年度比105.1%と、逆に増える結果となってしまった。また、再配送率を引き下げるべく、オープンロッカーの増設やコンビニ受取拡大を続けているが、まだ目に見える効果は現れていない。