「物流IoT」はどんな未来をもたらすのか。

 Eコマースの拡大による荷物取扱量の増大に物流現場の人手不足が重なり、物流業界の業務負荷はかつてないほど大きくなっている。今後もさらなる負荷増大が見込まれ、荷物を予定通りに運べなくなる「物流危機」が現実味を帯びる中、その解決手段としてIoTを活用した物流ソリューションへの期待が高まっている。

 本稿では、物流業界におけるIoT活用の方向性について事例を交えて展望し、「物流IoT時代」を見据えて物流事業者が取るべきアクションについて提言したい。

現実味を帯びる「物流危機」

「指定した時間にモノが届く」ことが当たり前ではなくなるかもしれない。物流業界の業務負荷が需給両面から限界を迎えつつあるためだ。

 需要面ではEコマース拡大の影響が大きい。「いつでもどこでも欲しいものを買いたい」という消費者ニーズを捉えたEコマースは年々市場規模を拡大し、それに伴い宅配される荷物も増大している。

 野村総合研究所によると、企業と消費者間の電子商取引市場は2014年に13.8兆円であったものが2022年には26兆円とほぼ倍増する見通しであり、物流業界が取り扱うEコマース関連の荷物量も同様のトレンドで増大すると見込まれる(参考:http://www.nri.com/Home/jp/news/2016/161121_1.aspx)。

 一方、物流サービスの供給面では物流業界の担い手不足も深刻だ。仕事がきつい割に給与水準が低い、長時間労働であるなどの理由から物流業界を敬遠する動きが顕著になっており、近年人手が足りないために仕事を断らざるを得ないという物流事業者の声も多い。担い手の高齢化や若年労働者の減少などにより、物流の担い手不足も今後ますます厳しい状況になると考えられる。