今こそ検討すべきタイ拠点の「マザー工場」化

グローバル展開に向けた実験場としてのASEAN・タイ

吉村 英亮/2017.4.20

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タイはASEANのIoTの中心拠点となるかもしれない。 Photo by Nik Cyclist, under CC BY 2.0.

 多くの場合、IoTで話題に上るのはドイツやアメリカなど先進国の企業動向である。一方で、日本企業が多く進出するタイにおいても、産業高度化という文脈から政府主導でIoTへの注目が高まっている。

 本稿では、IoT導入という観点から、“ASEANの中のタイ”の現状と課題、タイ政府の動向、それらを踏まえたタイに拠点を構える日本企業への示唆を述べる。

日本企業の生産機能が集約するASEANの中心

 タイには、人件費の安さや直接投資への恩典などを理由に、自動車産業を中心に多数の日系メーカーが進出してきた。生産機能に加えて開発機能の進出も早くから進んでおり、現在ではASEAN域内における生産・開発の中心となっている。

 また、昨今のASEAN統合の流れを受けて、周辺国とつながる道路インフラの整備が進み、「陸のASEAN(タイ・カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム)」の中心国としての位置づけも強まってきている。タイ政府としても自国内の市場規模が限定的であることから、これら周辺国との結びつきを強化しており、ASEAN地域のゲートウェーを目指している。

 一方で、経済成長や政治的背景によりタイの人件費は上昇しており、生産機能設置時のコストメリットを得にくくなってきた。2013年には、地域によって異なっていた最低賃金が、全国一律で1日あたり300バーツに引き上げられている。

 また、タイは既に高齢化社会に突入しているため労働力不足が深刻になってきており、今後は人件費上昇圧力がより高まるといえる。タイの経済成長率は現状および今後とも周辺国と比べて低い約3%で推移するとIMFは予測しており、タイは「中所得国の罠*1」に陥っているといえる。

*1:「先進国の高付加価値製品」と「後進国の低人件費による低価格製品」に挟まれて経済成長が頭打ちとなり、1人当たり国民所得が中程度で停滞する状況。