時間内に終えられるようムダな仕事を削減したり、IT化を進めたりして効率化を図ったケースも多い。しかし、それだけが理由ではない。未来工業もそうだが、残業のない職場を観察していると、社員のモチベーションが一般の企業とは明らかに違うことに気がつく。

私生活とのトレードオフ解消がポイント

 モチベーションが上がる最大の理由は、私生活とのトレードオフ(二律背反)がなくなるところにあるようだ。

 多くの日本企業は個人の仕事の分担が不明確で、できる人には仕事がたくさん回ってくる。そのため、がんばって仕事をすると残業が増える。結果的にプライベートな時間が減り、疲れも出る。

 家庭を持つ人は子どもや家のこと、独身者は遊びやデートが気になり、今日は何時に帰れるだろうかという心配が頭から離れない。

 そのため仕事に集中できず、上司から「新しい仕事に挑戦しろ」といわれても、挑戦したら帰りがますます遅くなるので最低限の仕事しかしようとしなくなる。だんだんと会社全体のモラール(士気)が低下していくのである。

 一方、残業がない職場では、いくらがんばって仕事をしても私生活へのしわ寄せは生じないので安心して仕事に没頭できるし、新たな仕事にも思い切ってチャレンジできる。しかも時間が決まっていれば、ダラダラと働かずに全力で仕事に打ち込むことができる。たとえハードな仕事でも、定時に終えられるならそれほど苦にならないものである。